はっちのバーカブログ

日常に体験したネタ話、日常にふと感じた事。毎日見る夢の話。そしてトレンドにバーカと一喝します。

はっちの物語

短編ブログ小説~車の中で~part①著はっち


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車の中から窓の向こうに流れる景色を僕はただじっと見つめていた。それは本当に綺麗な景色だった。

 

空も普段よりも青く感じて、風も懐かしい香りがして僕の心は徐々に柔らかくなった。

 

僕が乗っていた車の運転席には大学時代にお世話になった先生が乗っている。

 

助手席には友達、後部座席に僕とあと2人乗ることになっていた。大学の卒業式前から先生と約束していた事があったのだ。

 

随分と遅くなってしまったが卒業したらみんなで行こうと決めていた旅行当日、それは2月の朝だった――

 

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「本当にあいつらちゃんと来てるのかな?心配だよ。遅刻してないかな」

 

助手席に座っていた慶太が嫌味を込めて話しだした。慶太の声にあわせて僕は「いるって。約束は守る子達だよ」と淡々と言った。

 

その後で僕はもう一度窓の外を見た。会いたかった意味ともとれる"見たかった景色"が見れる緊張感が溢れた。

 

僕の心臓は音を立てたけれど、特別それに意味はなかった気がする。

 

それから僕は流れる景色に想いを馳せて、待ち合わせ場所に着くまでの時間を楽しみにしていた。

 

「もう少しで着くって、彼女達に電話してくれないかな?」

 

先生が慶太に言った。疲れを知らないような先生だ。運転は任せられる。

 

「了解です!」

 

慶太が彼女達に電話をしている最中、僕の心臓は激しくポンプ運動を始めた。

 

彼女に会うのは久しぶりだった。もう少しでこの僕たちが乗っている車に彼女達も乗る。

 

ずっと前から僕は今日の日を楽しみにしていた。それまでの日に僕の心臓は何回も悲鳴をあげた。

 

もしかしたら彼女は来れないかもしれない、そう聞いた事もあった。だからこそ今日の価値が分かっていた。

 

刻一刻と先生の運転する車は彼女達の元へと向かっていた。それに連動するように僕の体温は上がり始めた。風邪で熱が出たときのように。

 

きっと僕は素直に彼女と接することが出来ないのかもしれない。言い訳をするとすれば複雑に緊張していたからだ。

 

大学生活でも彼女に対して素直になれない自分がいたからだ。

 

「先生、あいつらコンビニの中にいるって。店内で時間潰してるんじゃないの?」

 

慶太がそう言った後に車は約束していたコンビニの駐車場に止まった。

 

店中に見えた懐かしい2人の女性の影、僕は深いため息をした。改めて深い呼吸をした。

 

「ちゃんと時間通りにいたね」

 

嫌味でも少し冗談めいた僕の発言は先生と慶太を笑わせる結果となった。笑い終わった後に先生は車から降りて彼女達に手を振った。

 

先生に気がついた彼女達は笑顔を見せながらゆっくりと歩いてこっちへと向かってきた。

 

当然"どちらか"が僕の隣に座る。また僕は視線を窓の外へ、彼女たちがいない方へと視線を外した。

 

僕は後部座席の左側に居た――

 

「先生おはよう!久しぶり」

 

梓(あずさ)が明るい声で挨拶をしたあとに慶太がこんな事を言った。

 

「俺のひざの上に座るか?」と助手席から覗くようにして言った。

 

「馬鹿!」と梓が慶太に大声を浴びせる。またその場では笑いが起こった。

 

それからだった。梓がもう1人の女性を僕が座ってるシートの隣に促した。

 

「よいしょ」

 

柔らかい香りが鼻にとまった。それは優しく懐かしい花の香りだった。胸が痛かった。

 

僕の体は硬直した。電池が切れたロボットのように僕の体は硬くなった。その動かなくなったロボットの右側に彩華がくっついた。

 

そのせいで僕が着ていたビニールで出来た安物のダウンジャケットがキュッと音を鳴らした。

 

僕は彼女の事が死ぬほど好きだった。だからこんな現実がある。情けない男だというレッテルを自分で貼った。

 

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短編ブログ小説~車の中で~part②著はっち

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