はっちのバーカブログ

日常に体験したネタ話、日常にふと感じた事。毎日見る夢の話。そしてトレンドにバーカと一喝します。

はっちの物語

短編ブログ小説~車の中で~part④著はっち


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眠りに落ちた僕は車内でいつも見ていた夢を頭の中に描いていた。彩華と過ごす日々の夢だった。

 

ずっと憧れ続けた彼女が隣にいる現実。僕の隣には彩華がいる。そっと、ずっと体が触れていた。彼女の体温を感じた。ぐっと僕の心は収縮した。

 

まだ学生気分の僕は大人になった彼女にどう対応したらいいのか分からなかった。

 

再会とはこの事だろうと僕は運命を感じていたのだ。馬鹿な事だとは十分承知はしていたけど。

 

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ずっと僕は緊張していた。ガタンと揺れる車に僕達は体をぶつけた。ただ幸せだった。

 

狭い空間で過ごせる時間。夢を見ながら微笑んだ。笑みが止まらなかったんだろう。

 

どれくらいの時間が経過したのかは分からなかった。ふと僕は少しだけ眠りから覚めて片目を薄く開けた。

 

そこで声が聞こえた。聞き覚えのある女性の声だった。彩華の甘い声が聞こえてきたのだ。

 

僕は数度顔を横に向けて彩華を見た。静かに静かに彼女にばれないように。そっと気づかれないように。

 

隣にいた彩華は左手で携帯電話をもって電話をしていた。彼女は誰と何を話しているのだろうかと気になった。

 

僕はまだ夢を見ているようだった――

 

「うん……いいよ。わかった」

 

彩華は目を細くして微笑んでいた。電話の相手は彼女の友達だろうか。

 

僕はそのまま寝たふりをして電話の声を聞こうとした。そこで微かに聞こえた低くて太い声。携帯電話の向こうでは男の声が聞こえた。

 

彩華はそこで優しくまた言葉を返した。

 

「うん……今寝てたんだよ。もうすぐで現地に着くと思うけど……うん、大丈夫。また後で電話するから。ありがとね」

 

聞いたことのない彩華の声だった。その時に僕は確信した。電話越しの相手は彩華の彼氏なんじゃないのかってことを。

 

僕はその瞬間に泣きそうになった。男のくせに妄想で泣きそうになるなんて。

 

あのときに僕に見せてくれた彩華の笑顔。それはきっと普遍的なものだったのだ。

 

なにも僕にとってのオリジナルでも何でもなかった。彩華は電話を切ったあと、真一文字で顔を作り笑顔になった。

 

僕はそこを見逃さなかった。世界にたった1人に見せる笑顔。愛する人にだけ見せる笑顔。彼女はそんな顔をしているように見えた。

 

僕は難しい数学のテストの答え合わせをするように彼女に聞いた。

 

「……電話してたのって彼氏?」

 

彼女の返事が怖かった。きっと僕が一瞬で解いた回答は正解だと思ったから。

 

「うん、ごめんね。起こしちゃったね。私って声が大きいから」

 

「いや、大丈夫だよ。やっぱり彼氏だと思った。電話してるときの彩華、幸せそうだったから……」

 

僕は素直に率直に彩華に好きと言いたかったのに……――

 

「そういうのって見て分かるもんなんだ。驚いた。祐君も早く彼女見つけて幸せになってね。好きな人は学生の時から変わってないんだったら再会して気持ち伝えないと! 卒業してからも連絡はとってるの?」

 

何も知らない彼女は微笑んでいる。それはそうだ。僕しか知らない気持ちなんだから。彩華は彼氏以外に見せる笑顔を僕に見せた。ずっとそんな風に見えた。

 

とてつもなく切なくなった。色を失うとはこの事か。分からなかった感情を頭から注がれている感覚だった。

 

僕は彩華の言葉を意図的に無視して、また窓の外を見た。そこはまるで不自然で理不尽な風景に見えた。

 

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短編ブログ小説~車の中で~part⑤著はっち

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