短編ブログ小説~車の中で~finale著はっち
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たくさんの時間を越えて僕たちの旅はもうすぐで終わろうとしていた。
旅館に荷物を置いて、僕達は観光を楽しむ事になる。真実を知らなければ僕はもっともっとこの旅を楽しめたのかもしれない。
でもそれは事実――
「うっほ~い。よく寝た!」
慶太が長い眠りから目を覚ました。気持ち良さそうだった。
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「梓?もうすぐで着くよ」
彩華が梓を起こした。
「ふぅ……。疲れた」
先生は運転で疲れていたようだ。さすがに何時間も運転すれば先生でも疲れるみたいだ。
そんなみんなだったけれど、僕はただ……
「本当に楽しみになってきた。今回の旅をいい思い出にしよう!最高の思い出にしよう」
車内は笑顔に溢れていた。明るい声で溢れていた。
「そうだね。僕も楽しむよ!」
強がりから出た精一杯の僕の言葉だった。初めて自分の言葉を殺したのかもしれない。
車内の幸せを僕は少しでも感じられた。息をすれば愛しい味、心臓の痛み。僕の隣に彩華がいる。
僕は少しだけ……
「さよなら」と空間へ呟いた――
確かな喪失感の中で僕は切なさを感じていた。切ない気持ちは心が嫌がる。
太陽の表情が変わる頃に僕達は目的地へと無事に着いた。
「さぁ、チェックインして部屋に行こう」
それぞれが車からカバンを持って降りて歩いてそこへと向かった。
僕は一番最後に降りてずっと彩華の背中を見ながら歩いた。どこか何かぼやけた映像が見えた。素敵な彼氏と歩く彩華の姿が。
当然、そこに僕は居ない。こんな僕はいない。でもそれで良かった。そうじゃなきゃいけない。そう思えた。それが現実だから。それが今だから――
好きな人の幸せを祈えるように、願えるようにそんな強い自分になろうと僕は後ろから彩華に言葉を投げかけた。
「彩華!」
今日一番の大きな声で言った。彼女は驚いて僕のほうへと振り返った。
「どうしたの?」
僕は言葉に間をあけた。
「部屋に入ったらみんなでトランプしない?家から持ってきたんだ」
「トランプ?いいわよ!私強いから負けないよ。何が強いかは分からないけど」
また僕は恋をしてしまった。でも言葉では言わなかった。心でも感じていない。
「やるのはババ抜きだけどね!」
「いいよ。楽しみ!」
僕はその場で立ち止まり誰もいない後ろを振り返った。
そこには僕達が乗ってきた車があった。その車の中で僕と彩華は触れ合っていたのだ。
ずっとずっと僕は彼女に恋をしていた。掛け替えのない僕だけの恋だったけれど、それでよかった。
彼女の目の前で号泣したい気持ちは確かにあった。ずっと彼女の事を想っていたから。
今日まで想い続けた気持ちが口から出せない悔しさもあったから。でも大切なのは"今"だということに僕は気がつけた。
彼女には掛け替えのない幸せがある。少し前の僕と同じように愛する人がいる。
いつか僕が彩華を愛したくらい僕も愛されないといけない。それは愛されたらいいなと思った。
だから僕は心に少しだけ傷のついた優しい鍵をかけた。今はそっと……
だから………
車の中で過ごした一瞬を、学生時代に愛を感じさせてくれた彩華の幻を後にして
僕は現実に今を生きようと思った。
―END―
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