はっちのバーカブログ

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はっちの物語

短編ブログ小説【暗闇の中で僕は泣いた】part1

2016/08/16


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「確か……彼女が交通事故で亡くなっちゃう話よ。この前ね、原作でも読んだの。原作も好きだけど映画化するって話だったから楽しみでさ。でも別に無理して見なくてもいいんだよ?」

 

僕の彼女の沙希が寂しそうな声で言ってきた。"その映画"の話は本当はあまり聞きたくはなかった。

 

僅かな気持ちだったけれど――

 

「映画の内容は秘密にしててよ。それって大事な事だから。内容知りたくない人だっているんだから。そうそう、沙希は心配してるようだけど僕もその映画楽しみにしてるんだから」

 

「だってまだ分からないんでしょ?映画館に行くかどうかなんて。だから少しでも内容を言って興味をもってもらおうと思って言ってみたの」

 

「ふーん。そういうことね」

 

僕が運転する車は桜坂を抜けた。向こうを見れば山には雲が覆いかぶさり、まるで変な帽子を被ったようにも見えた。

 

「夕ご飯はどうする?家で食べる?どうしよっか?」

 

「もちろん食べるよ。今日はすき焼きにしない?なんか肉が食べたい気分なんだ」

 

僕の右手は湿っていた。冬は乾燥でひどかった右手はちゃんと潤ってハンドルを強く握りしめた。

 

「それで約束していた映画はどうするの?本当に見るの?」

 

「当たり前じゃん。あの映画って何時からだっけ?」

 

前から沙希と約束していた事だった。いつも映画を見る時は決まって家でレンタルしてきた映画を見るのが当たり前だった。

 

僕と沙希は地元の映画館へ行くことはめったになかった。"めったに"とはほとんど……いや全くといって沙希とは行ったことがなかったのだ。

 

「初めてだね。沙希と映画を見に行くなんて。なんか本当に今までごめんね」

 

僕の言葉を聞いた瞬間に彼女は悲しい顔をしたような気がした。

 

「だって……――」

 

僕は真剣にフロントガラスの向こうを見た。対向車線を睨んではまた言葉を彼女に向けた。

 

「……ごめん。本当に気にしなくていいから。もう終わったことだし、考えたって仕方がないから」

 

「翔ちゃんがそう言ったって私は気にするんだって!絶対絶対胸が苦しくなるんだから。私だったら嫌だもん」

 

「そういう沙希が僕は嫌いだよ。神経質になるのはよくないよ。あの話は遠い遠い昔の話なんだから」

 

そのまま僕の運転する車は河川敷に入った。見渡せば川が見えて、そこで戯れる人達も見えた。大きな橋があったがその道には入らなかった。僕は車を運転しながら考えた。沙希と一緒に映画館へ行くことの意味を。

 

地元に昔からある映画館。僕は昔に付き合った彼女とはよく映画を見に行っていた。

 

僕は純粋で素直な恋愛をしてきたと思っている。色んな出会いも経験して別れも経験した。

 

そこで何年か前にも友達に聞いた事があった――

 

「……本当の別れってどういう事だと思う?シンプルに考えていいよ」

 

友達は不思議そうな顔で僕に言った。

 

「本当の別れ?どうだろうな。死んでしまうとか?それは極端か。そういう事じゃなくて?」

 

間をあけずに僕は返答した。

 

「僕はそう思う。死んでしまうことが本当の別れだって今なら分かる気がするんだ」

 

友達は僕の言葉を聞いて笑った。

 

「それは違うだろ!その場から離れること、会えなくなること。そういうことだろ?別れって。友達とか彼女とか……」

 

笑っている友達を僕は冷たい目で見た。別に友達を嫌った訳じゃなく。

 

「死んでしまったんだ。僕は本当に大好きだった。……あいつ交通事故で死んだんだ」

 

友達は口を閉ざした。それから目を見開いてもう一度僕に聞いた。

 

「あいつって……菜々美ちゃんだろ?うん。本当に残念だった。お前だけじゃないよ。俺たちだって悲しいんだから」

 

「………うん、ごめん。ありがとう」

 

いつか付き合った僕の彼女。菜々美は僕の事を本当に好きでいてくれて僕も本当に幸せだった。僕の青春を支えてくれた人でもあった。

 

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短編ブログ小説【暗闇の中で僕は泣いた】part2

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